日本の法令や契約書の用語として使用される「その他の」と「その他」の表現は、日常用語の通常の用法とは違って、異なった意味をもっているとされている。前後の語呂や語感等の関係で、「その他の」と使うべきところに「その他」が使われることがないわけではないが、「その他の」と「その他」は、別個の意味を伝えるための法律用語であるというのが、約束になっている。以下、「その他の」・「その他」が、英文契約書等の法律文書ではどのように表現されるのか、を考えてみようと思います。

来月(2009年8月1日)から、国際物品売買契約に関する国際連合条約(UNITED NATIONS CONVENTION ON CONTRACTS FOR THE INTERNATIONAL SALE OF GOODS (1980)(以下「ウィーン売買条約CISG)」、場合により「本条約」という。)が日本に対して効力を生ずる。英文契約書の翻訳に携わる者にとっても、これは無視できない極めて重大な出来事である。

expressly or impliedly (明示的または黙示的)

 上記の2つの語は、対でよく使用され、契約書や法律関係のテキストで頻繁に見かける表現です。文脈によっては、express or implied、あるいはexpressed or impliedとして使われています。後で引用する加藤と丸山の対談に出てくるように、explicitやimplicitが使われることもあります。法律用語としては、「明示的または黙示的」、あるいは「明示または黙示」という日本語が使用されています。ここで取り上げたのは、ときどき、「黙示的」や「黙示」を、「暗示的」や「暗に、暗黙に」と訳している場合を見かけることがあるからです。以下に見るように、法律用語としては、「黙示的」「黙示」はすでに定着している表現です。なぜ、このような誤訳(?)が生じるのか。しかも、自他共に英語の達人とされている人たちの訳から生じているのです。ここで考えてみようと思います。

為替手形及約束手形ニ関シ統一法ヲ制定スル条約(1930) (Convention Providing a Uniform Law For Bills of Exchange and Promissory Notes, Geneva, 1930, The League of Nations)

国際商取引の契約書の条項、たとえば支払条項、解除条項等で、日本の手形法に関する事項が規定され、そこで手形法特有の用語・表現が使用され、これを英文に翻訳する必要が生じる場合がある。このサイトは、手形法特有の用語・表現に該当する英語を検索し、または確認したい場合に便利である。

次の(1)の英文は、私が英日翻訳の依頼を受けた英文契約書の一部です。翻訳の依頼者の機密保持のために、当事者をそれぞれABCとXYZに変えてありますが、それ以外は、契約書の中の英文はそのままです。この英文を日本語に翻訳するに当たって、少し時間をかけたのが identityという言葉の日本語訳でした。

(1) If ABC is to provide XYZ with any services under this Agreement through affiliates, the identity of such affiliates shall be provided to XYZ, as applicable.

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